「あぁ、残念ですがご主人と別れてください」
年に数回ではあるが私とお話をさせていただくと、ご主人であったり奥さんなどと別れたりしてもらうように説得する事がある。

例えば。
Aさん「新婚なんですけど」
いやいや、新婚さんでもダメです。
決して私が羨ましいと思ってるからとか、やっかみとかではないですよ。

Bさん「私、主人と一緒じゃないとダメなんです」
近い将来に私もそんな事を言われてみたいが、それでもダメです。

Cさん「愛犬と一緒にいてあげないと可愛そすぎて」
可愛いでしょうがそれでもダメです。

Dさん「猫は?」
はい、それもダメ。

皆さん、もう一度言います。
「別れてください!!」

 

新婚であろうが、熟年であろうが関係ない!! ここは心を鬼にしてお話をする。
私だって本当はそんな事を言うのは嫌なんですよ、でもね言わないとその方のためにならないから……。
そう「あなたのためだから〜」

こんな事を言うようになったのは他でもない、そんなに多くはないが「とある彼女」とお付き合いをさせていただいた経験と学生時代の授業の話などからも来ている。
彼女とは付き合っていて一緒にいるとても楽しく時間を忘れるほどで、一緒に旅行にも行ったりもして食事の好みなども合っていて言う事がない。
さすがに「あ」「うん」とはいかないが意思の疎通もよく価値観も近かったことからお互いに結婚を意識したりもした。
しかしそんな彼女を前にしても、別れた方が良いという事に気付かされたのである。

また学生時代の授業の一コマの話の中では先生が真剣に、この事について話していたのだが正直いって「またまた〜」「そんな事言っても大丈夫でしょう」「そんな風になるのがバカなんだ」などと思っていた。
まさか数年後に自分の身に降りかかってくるとは!!

私の場合は彼女と付き合い出す中で、まず右腕が強張り痛みが出るようになり、さらには痺れが出て握力が弱くなってしまう、それと同時に初めはなんとなく体が強張るようになり、疲れが取れず胃腸の調子も心なしか悪くなり便通も悪く食欲もなくなるという症状がのしかかってくる。
そして、いくら寝てもスッキリすることはなく、いつまでたってもだるさが取れない。
これは彼女に毒されているのか? 綺麗な花には毒があるというが本当だったのか?
そうであるなら良かったのかもしれない、しかしその一つは「いわゆるハネムーンシンドローム」
医学的には「橈骨神経麻痺」と言いますが主に腕枕をしている事により腕の神経が圧迫されて痛みや麻痺を起こしてしまう何とも悲しい肘から先に出る麻痺症状。
ラブラブな新婚夫婦に起こりやすいことから、ハネムーンシンドロームと名付けられる。
さらにラブラブだった事により同じベッドの隣にいる彼女を寝返りでたたいてしまってはいけない、起こしてはいけないという無意識の気遣いで熟睡できず浅い眠りのまま生活を送り熟睡する事ができなくなり「自律神経失調症」となってしまったのでしたのでした。
これを治すのには中々大変で、まずは自分の中の欲望と戦わなくてはならない。
そう、腕枕をやめる事。
そして、寝具を分け一緒に寝ない事だった。
これが人間弱いもので、週末になると症状が寛解しているので喉元過ぎればなんとやら、週末の外泊には再発させてしまうのである。
そのせいでこの症状に長い間苦しめられ、また何度も繰り返していると段々治りも悪くなってくるのでした。
我ながら、なんとも情けない。

そんな経験からは、私の治療院へいらっしゃる方で「自律神経症状」にお悩みの方には睡眠の状態をお聞きする事があります。
「どなたかと一緒に寝ていますか?」
そして隣に誰かがいる、または最近で多いのはペットと一緒に寝ているという方には迷わずお話をさせていただきます。
「寝具を分けてください」「ご主人と別れましょう」「ペットと寝る事をやめましょう」と。
彼女や、彼氏、ご主人や、奥さん、ペットに至るまで同じ寝具で隣に寝ている人がいると人間ぐっすりと寝られない。
良質の睡眠には、寝ていてもある程度自由に動けるスペースが必要で、寝返りをしっかりとうてる事は実はとても大切なのです。
人間、実は寝ている時に自分の身体の調整をしていると言われています。
寝返りが自由にうてないという事は、その自己調整機能を放棄している事になります。
小さい子供は、一晩寝ると元気ですよね。
寝ている時も、寝返りをぐるぐるしている事が多ですがこの時にうまく自分の身体を調整していると考えられています。
大人になると、子供ほどではありませんが寝返りはします。
ただでさえ、子供ほど寝返りをしなくなり身体の調整力が落ちているのにさらに寝返りがうてないなんて!!

健康に過ごす為のポイントはいくつもありますが、元気に生活をするためには良質の睡眠をとること。
その為には子供のように自由に寝返りをうてる空間で寝る。
こんな事が、実は結構大切だったりします。

最後に、大切なことなのでもう一度。

「最愛のご主人と別れてください」

治療家である私からのささやかなお願いです。
くれぐれも、羨ましいからとかではないですよ。

 

このお話はフィクションです。

この投稿は、天狼院書店にて掲載されたものを編集し投稿しています。

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